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愛情の間食

 精神が不安定になった時ーー例えば、漠然とした恐怖や不安、醜い劣等感や嫉妬を抱いた時、私の脳裏に、一枚の絵が浮かぶ。それは、イギリスの画家エドワード・バーン=ジョーンズの『愛』という作品である(『「天使」の名画  平松 洋 著』)。赤とピンクが混じり合ったような色の大きな翼を生やした天使ーー私には女神にも見えるーーが、美しい弓を大事そうに握りしめがら、正面を見ている。その表情は、すべてを許し、受け入れるような寛容さを感じる。翼と同じ色をした天使の髪と唇、足元に寄り添う女性達の衣服、背景の花ーー作品の大半を占めるその鮮やかな色から、あたたかみも感じる。
 解説によると、この絵の主題は「壮大な愛の具象化」だそうだ。天使の頭上には、ダンテの『神曲』の一節「愛は太陽もほかの星も動かす」と書かれている。

 この絵が頭に浮かぶと、私はまるでこの天使の翼に守られるように包み込まれた気分になる。すると、禍々しく激しい勢いで私の精神を支配しようとしていた恐ろしい感情が、スゥーッと消えていくのである。それが無くなったかと思うと、今度は逆に、あたたかく穏やかな気分が湧き水のように溢れてきて、私を優しい気持ちにするのである。

 私はつい、「他人から愛情を得たい」という欲求が生じやすい人間である。それ自体は、人である以上当たり前の欲求だと思うが、私の場合はその度合いが強く、「欲するだけの愛情を感じられないと勝手に失望する」という厄介な悪癖までついている。家庭機能不全の環境で育った人間は、そうでない家庭で育った人間と比べて、多くの愛情を欲する傾向があるーー人並みの愛情表現では、「自分が愛されている」と感じられないらしい。そういった人間は、「愛情の間食」となるものを見つける必要があるそうだ。

 私にとってそれは、「壮大な愛を具象化した天使」の絵であった。


 この絵に出会ったことと、作者エドワード・バーン=ジョーンズ、そして素晴らしいきっかけを与えてくださった平松洋氏に、心から感謝したい。

by kazenoyukumama | 2020-03-26 22:25 | 日記

心に感じたことを、自由に記録していきます。このブログが、自分にとっての「安全基地」となれるよう、祈っています。